オリジナルフリーホラー台本:夜中の訪問者

台本

※こちらの記事は動画や音声にて配信するサイトにて使用できます。
※使用する際に報告はいりませんが、説明欄に必ずサイト記事のURLをお貼りください。
※自作発言はおやめください。

この物語は、実話を元にしたノンフィクションです。

本編

幽霊って非科学的で100人中100人全員が見れるものではないですし
まあ、なんというか、そこまで強く信じていたわけではありません。

基本は幽霊?なにそれ美味しいの?と思いながら生きてきたし
実害に遭った経験はないからなんおとも言えないのですが、
不本意ながら信じざるを得ないような経験をしたことがあるのです。

今回は、その経験談のうちの一つのお話。

当時、小学校3年生だった私が通う小学校では
七不思議やこっくりさんなど有名なホラーが流行っていました。
とは言っても子供の噂話程度。
確実な証拠や記録なんてものは一切なく、
クラスメイトを怖がらせるための作り話のようなものでした。
クラスではあまり目立った存在ではない私でしたが、
実はそういったホラージャンルの話が大好きで、
時にはクラスメイト数人に誘われて、こっくりさんを実際にしてみたり、
トイレに行って花子さんを呼んでみたりと色々悪ふざけを行っていました。

今考えると、とんでもなく恐ろしいことをしていましたが、
当時はたいして深く考えもせず、連日のように行っていました。

まあ、当然、正しい順序など知りませんから
『本物』が現れるはずもなく、クラスメイトが悪ふざけでわざとコインを動かしているだけの
ただのお遊びにしか過ぎませんでした。
しかし、私自身、当時はちょっと変わった体験をすることが多かったので、
全てが作りものであるとは思っておらず、
幽霊の存在というのも、どちらかというと信じている方だったのです。

もちろん、最初から信じていたわけではありませんでした。

信じざるを得ない体験を、いくつかしてしまった、というだけの話。

その日は、いつものように学校で『こっくりさん』を行い、
クラスメイトときゃーきゃー遊んで帰った日の事でした。

反抗期真っ盛りだった私は、いつもの如く、母親と大喧嘩。
当時習っていたピアノの練習がめんどくさくてさぼっていると、
何度も何度もしつこく、「練習しなさい」と怒られたり、
宿題を早くしなさい、と口うるさく言われたことに、
私が腹を立てて、反抗的な態度を取ったことが原因でした。

超がつくほどマイペースだった私は、
「ああしろ」「こうしろ」と口うるさく言われたことが気に入らず、
かといって、口で言って勝てる相手ではないと分かっていたので、
母に向かって物を投げて解決しようとしたこともしばしばありました。

いつもなら、母親が折れて、勝手にしなさい、と宣告し、
しばらく時間が空いてから、私が母に謝罪をする、というパターンなのですが、
この日は、珍しく母親が

「そんなにやりたくないなら辞めてしまいなさい!!」

と、怒鳴りながらピアノの教本を私に向かって投げつけてきたのです。

滅多に怒鳴ったり物を投げたりすることがない母が珍しく、
怒鳴りながら私に向かって投げてきた事に驚き、
私は泣きながら母に謝罪をしました。
しかし、怒りが振り切っている母が私の謝罪をすぐに聞き入れることはなく、
しばらくして冷静になった母に、その後、滾々と説教をされたのでした。

いつもと違う様子の母親に動揺してしまっていたからでしょうか?

その日の夜、不思議な体験をしてしまったのです。

私たち家族は、いつも川の字のように横並びに寝ていて、
端から私、母、弟、父の順番で並んで寝ていました。

6畳二間の部屋を仕切っている襖(ふすま)を外し、
一つの部屋として使用していたのですが、
襖で仕切られている片側を就寝時に使用して、
もう片方の部屋にはテレビとピアノが設置されていました。

位置関係としては寝ている頭の方向に、ピアノやテレビが置いてあることになります。

いつものように川の字になり、私は壁側の定位置へと寝転ぶと、
21時頃には既に就寝してました。

いつもなら、一度眠りにつくと滅多な事では目を覚まさないのですが、
なぜかこの日だけは、夜中にはっきりと目が覚めてしまったのでした。

正確な時刻は覚えていませんが、
辺りは真っ暗で、おおよそ午前2時頃だったと思います。

当時、特に怖がりではなかったのですが、
事情により、暗闇が苦手だったので、
母親を起こしてトイレに行こうと思い、体制を変えて
すこし眠い目をこすりながら、
なんとなくピアノの方向に目を向けました。

『・・・ん?』

暗くてよく見えませんでしたが、
ピアノの前に、横に寝そべっている人影を見つけました。

『おかあ・・・さん?』

そこに居たのは母親。
なんでそんなところで寝そべっているんだろう?
しかも、寝そべっている母からは、怒っているような雰囲気を感じました。

『今日、私が言うことを聞かなかったからって、
 なにも、そんなに睨むことないじゃん』

そう思いながら、一旦視線を逸らして、
完全に身体を起き上がらせようと右を向いた時でした。

隣にいびきをかきながら眠っている母の姿が目に映りました。

「え・・・?」

確かに母は、先ほどピアノの前に寝そべっていたはず・・・。
そこから布団に移ろうと思ったら、
大きな物音をたてるか、瞬間移動をしなくては、どう考えても不可能です。

しかし、辺りはシン…と静まり返っています。

私は何が起こっているのかよく分かりませんでしたが、
とりあえず、恐る恐るピアノの方向をもう一度確認すると、
そこにはやはり母のような『なにか』が横たわっていました。

私の視界に入った、母のような『なにか』は、
体系や雰囲気こそ母に似ているものの、手足の細さが圧倒的に違いました。
それと、不思議な事に、顔の辺りが黒く塗りつぶされたようになっていて
表情が全く確認できませんでした。

出来ない、はずでした。

表情は何もわからないくらい、顔の辺りが、
まるで鉛筆で塗りつぶしたように真っ黒なのですが、
表情を見れないはずなのにも関わらず、
恐ろしいほどに、私へ憎悪や怒りを向けているがはっきりと感じ取れたのです。

その時、私は自分が行った『こっくりさん』の事を思い出しました。

あの時、学校から何か連れて帰ってきてしまったの?
そもそも、母親はここにいるのに、
どうして母親に似た『なにか』がそこに存在しているの?

そんな疑問が頭に浮かびましたが、
結果として、その場にいる母のような『なにか』が
自分にとって恐怖の対象である、という事を脳が認識したのです。

認識したとたんに、
一気に血の気が引き、心臓がバクバクと音を立て始めました。

頭の中が真っ白になった私は、
布団を頭から被って、隣にいる『本物の』母親にぎゅっと抱き着いて、
目を閉じたのでした。
まだ小学生だった私は恐怖で頭がパニックになり、
気が付くと朝を迎えていたのでした。

恐ろしく思った私は、昨夜のことを母に話してみたのです。

見た目が母に似ていた事。
やけに怒って見えたということ。
そのまま気を失うようにして眠ったこと。

すると、話を聞いていた母の顔がどんどんと青ざめていき、
私が話し終える頃に慌ててどこかへ電話をかけていたのです。

九州のとある県の独特の訛りで話す母の様子を見た感じ、
どうやら母の家族に電話を掛けている様子でした。
数分電話をした後で、電話を切ると、母親は私の方をじっと見て、

「昨日、あんたが見たのは、かあちゃんのおばあちゃんかもしれん。」

そう言うのでした。

「え?お母さんのおばあちゃん?」

「そうや。あたしのおばあちゃんはな、あたしにそっくりやってん。
 体型は今のあたしに似てぽっちゃりやったんやけどな。
 おばあちゃんは手足がめっちゃ細かったんよ。」

「それって・・・」

母親が話す曾祖母の特徴は、昨夜私がみた母親に似た『なにか』とそっくりでした。

「しかもな、あんたが昨日おばあちゃんを見ちゃった日は、
 『おばあちゃんの命日』やったんよ・・・。」

真っ青な顔をしてそう話す母親の顔を見て、私は鳥肌がたちました。
母親が言うには、曾祖母は、生きているときにかなり母親を可愛がっていたらしく、
ボケが始まってからずっと一緒に暮らしてきたらしいのです。

祖母が亡くなった時も、既に実家を出ていた母親は
ちょっと不思議な現象が起きて、自分が死んだことを教えてくれたんだとか。

母親曰く、このところ私の反抗期が酷かったのを見かねて、
私の事を叱りに来たのではないか、という話でした。

幼かった私は母親の話を聞いて、確かにそうかもしれないと納得し、
その年は家族みんなで曾祖母の墓参りに行きました。

とはいえ、命日が重なっていて本当にゾッとしたんです。
しかも、母親も祖母も叔母も、みんなが曾祖母の命日を忘れていたんだとか・・・。

今だから思うのですが、
私の反抗期を叱りに来たのではなく、
自分の命日をみんなが忘れていたことに腹を立てていたのだとしたら・・・?
一番可愛がっていた母親すらも忘れていたことに怒りを覚えたのだとしたら・・・?

ちなみに、私の見た目は、母親の幼少期にそっくりなんだそうです。

私をじっと見つめていたと感じたのですが、
もしかすると、私を母親と勘違いして見つめていたのだとしたら・・・。

私は、誰にも言えずに、一人ゾッとしたのでした。

それ以降は曾祖母の姿を見ることは無かったのですが、
何故か命日の近くになると決まって私の体調が悪くなったり、
曾祖母を彷彿をさせるような事を無意識に私が口にするようになりました。

全く意識はしていないのに。

母親は驚きつつも、おばあちゃんが会いに来てるのかな。と言っていましたが、
何年も命日を忘れていた母が毎年のように不思議な出来事が起こるので、
正直、私は気味が悪く思うこともありました。

大人になった今でも毎年命日の近くになると不思議な事が続くので
その度にあの日あったことを思い出しては鳥肌が立っています。

あの日私が見たのは本当に『母親の祖母』だったのでしょうか?

それともあの日私が見たものは・・・。

ーーーーーend.

橘コメント

いかがでしたか?

今回は初台本を投稿しましたが、動画にするとめちゃくちゃ短いと思うので
良い感じに改編してショート動画や音声配信サイトなどで読んでいただけると大変うれしいです。
時々加筆したり修正したりするかもしれませんが、その際はこちらに記載しておきます。
沢山の方の目に留まると嬉しいです。

信じるか信じないかは、あなた次第。

2023/9/12 投稿

ご依頼はこちら

各種橘の仕事依頼先です。

▼クラウドワークス

▼ランサーズ

▼ココナラ

タイトルとURLをコピーしました